株式会社ではなくNPO法人として起業する人が増えている?

最近、起業を検討する人の間でNPO法人が注目を集めています。



NPO法人とは?

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「NPO」とは「Non Profit Organization」の略語で「特定非営利活動法人」と訳されたりします。つまり、特定の分野で利益を目的としない組織という意味になります。「法人」とは、「法が定める人」という意味で、人の集まりや財産を法律上、人と同じように権利・義務の主体として扱うことが出来るというもので、銀行口座を作ったり不動産を所有したり出来ます。


なぜNPO法人として起業する?

NPO法人は株式会社とは別物のように考えている方が多いかもしれませんが、極端な言い方をすれば税制上の優遇があって分野に少し制限があるだけでほとんど同じことが出来ます。給料ももらえますし、営利活動も出来ます。ただ、その利益を分配は出来ません、活動のために使います。NPO法人は特定非営利活動法人と訳されるので勘違いしやすいですが、この非営利は利益を分配しないという意味であって営利活動をしてはいけないという意味ではありません。


さて、NPO法人と株式会社の違いは何だと思いますか?NPO法人が社会貢献を目的としていることでしょうか?いえ、株式会社もより良い商品やサービスを提供することで社会貢献しています。つまり、その点でも差はないんですね。ですので、最近起業される方で社会に貢献したいと考える方はNPO法人として会社を立ち上げる方が多いのです。


まずはメリットから見ていきます。

NPO法人のメリット

  • 設立資金がかからず、完全無料で法人立ち上げが可能
  • 法人名で登記できる
  • 銀行口座が開ける
  • 不足した資金を稼ぐために「その他の事業」(支出額は総支出額の2分の1以下)として収益事業ができるようになっている
  • 社会的な信用が得られる(特に社会的な信用という点では行政府の認証を得ているということでボランティアの任意団体とは大きく異なります。)

知識は少し必要になりますが、無料で立ち上げが可能な法人であることは大きなメリットです。また、寄付による資金調達がしやすいことやgoogle等が行うNPO法人支援制度を活用すれば月額100万円の広告費が無料になることもあります。
※詳細はGoogle Ad Grants(特定非営利団体NPO法人向けadwords)についてをご覧ください。



NPO法人のデメリット

  • 事業年度終了後に事業報告書や収支計算書などの書類を出さねばならない
  • 特定非営利活動(本来事業ともよんでいます)以外に「その他の事業」を行っていれば本来事業とは別々に帳簿をつけて、収支計算や財産目録なども全部別に作らなければなりません。
  • 10人以上の社員が必要となる
  • 「特定非営利活動」の20種類の活動分野に該当するものしかNPO法人を設立できない

※「特定非営利活動」については以下を参照
「特定非営利活動」とは、法が定める20種類の分野に当てはまり、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする活動のことをさします。「特定」という文字が入っているのは、活動の分野が限られているという意味です。株式会社が株という形で資本金を集めて事業をし、儲かった分を株主など出資者で分配する野に対して、NPO法人の非営利とは利益が発生してもその分配せずに次月繰り越しするという意味です。もちろん働いた分の給料はもらって問題ありません。その点でもNPOとボランティアは違う性質のものなんですね。

※「特定非営利活動」の20種類の活動分野については以下を参照

・保健、医療又は福祉の増進を図る活動
・社会教育の推進を図る活動
・まちづくりの推進を図る活動
・観光の振興を図る活動
・農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
・学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
・環境の保全を図る活動
・災害救援活動
・地域安全活動
・人権の擁護又は平和の推進を図る活動
・国際協力の活動
・男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
・子どもの健全育成を図る活動
・情報化社会の発展を図る活動
・科学技術の振興を図る活動
・経済活動の活性化を図る活動
・職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
・消費者の保護を図る活動
・前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
・前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

※引用元内閣府NPOホームページ

様々な内容が載っていて難しく感じるかもしれませんが、これだけ広範囲のジャンルに分かれているのでほぼすべての活動がなんらかの項目に該当します。どの活動に当てはまるかを検討して、どうしても分からない場合は専門家の方に相談しましょう。NPO法人の設立を専門にした行政書士事務所などもあります。

NPO法人設立までの流れ

NPO法人設立までの流れ

社員(正会員)を10名以上集めて役員(理事・監事)と設立代表者、主たる事務所、法人の資金繰りと活動方針などを決める
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設立に必要な書類の作成(詳細は次の項目にに記載しています)
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所轄庁の担当者と事前に打ち合わせを行ってから、設立総会を行う
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所轄庁に設立認証の申請を行うと、所轄庁にて2ヶ月の縦覧・約2ヶ月かけての審査
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認証されれば設立の登記をしてNPO法人設立完了なので官公署への届出をする

提出書類について

都道府県ごとのHPに以下のような申請書類のテンプレートがあります。ただし以下のように都道府県の管轄か市町村の管轄かによって見に行くHPや申請書類も変わるので事前に確認しましょう。良く似ていますが、間違えると作り直しになります。

※都道府県の管轄か市町村の管轄かについて
紛らわしいのですが、どちらが管轄になるかは事務所の数によって決まります。2以上の都道府県に事務所がある場合は主たる事務所の都道府県が管轄です。1つの政令指定都市のみに事務所がある場合は当該政令指定都市が管轄です。1つの都道府県のみに事務所がある場合で政令指定都市でない場合は事務所がある都道府県が管轄です。

・特定非営利活動法人(NPO法人)制度
(特定非営利活動法人の設立の手引き)
・NPOパートナーシップセンター
(NPOと行政及びNPO相互の情報交換、交流などの幅広い活動支拠点、NPO協働推進の拠点となる京都府NPOパートナーシップセンターを設置している場合があります。)
・申請書類
(名称や人数、設立趣旨など固有のものを編集するだけで申請書類が作成できるテンプレートがあります)
・NPO支援連携融資制度
(自治体によって異なりますが、地域の課題解決など公益活動に取り組むNPO法人の自己資金を融資することで、NPO法人が安定的かつ発展的に活動を継続できるよう支援を行う制度がある場合があります。)

※とにかく行政のHPには役立つ情報がたくさんあります。自分から見に行かなければ、情報をもらえないことも多いので、しっかり確認しましょう。

【NPO法人設立のための書類サンプル】
※「管轄の都道府県名や市町村名+NPO法人設立」などで検索すればテンプレートが入手できます。

様式 提出部数 備考
設立認証申請書 1 名称や所在地など基本情報を記入するものです。
定款 2 1部は縦覧用。定款とは設立するNPO法人の目的・内部組織・活動内容などに関する根本規則を定める文書です
役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員について報酬の有無を記載したもの) 1 NPO法人は役員には、理事3人以上と監事1人以上が必要です。社員は10名以上必要です。社員は、個人又は法人、任意団体のいずれでもよく、国籍、住所地等の制限はありません。また社員は、理事、監事の役員を兼務することができます。
設立趣旨書 2 1部は縦覧用。NPO法人を設立することになった経緯を簡潔に説明する書類です。なぜ任意団体のNPOではいけないのかやNPO法人を設立することでどんなことも目的に活動していくのかを記載します。
各役員が法第20条各号に該当しないこと及び法第21条の規定に違反しないことを誓約し、並びに就任を承諾する書面の謄本 1 法第20条、21条すなわち新興宗教や暴力団ではないですよ!という誓約書になります。
各役員の住所及び居所を証する書面 その名の通り、住民票の写し又は住民票記載事項証明書ですね。写しはコピーのことではありません、市役所の原本からの写しという意味で、通常の戸籍抄本や戸籍謄本のことです。
社員のうち10人以上の者の名簿 1 テキストベースで社員の名簿を作成するだけです。
設立についての意思の決定を証する議事録の謄本 1 設立のためには理事のメンバーで集まって、総会を開く必要があります。何時に始まって何時まで誰が議長をして何人参加してといったことを細かく書く必要がありますが、テンプレートが優秀です。
設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書 2 1部は縦覧用。会社の場合と同じく事業計画はとても大事です。NPO法人といえど、資金がなければ活動は出来ません。しっかりとした計画を立てましょう。
設立当初の事業年度及び翌事業年度の収支予算書 2 1部は縦覧用。収支の計画書です。NPO法人化する団体は既に任意団体で活動していて収益が出ている場合が多いです。その場合は記入しやすいですが、そうでない場合はしっかりとした計画に基づいて作成しましょう。